Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しゃんはい
上海
横光 利一
Lisez 上海 (しゃんはい) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 628 caractères · 292 écrans
一〇
――それならと参木は考えた。
――あのロシア人たちに、われわれは同情する必要は少しもない。
このような非情な、明確な論理の最後で、ふと参木は、お杉と自分が誰を困らせたことがあるだろうと考えた。すると、彼は、鬱勃として揺れ出して来ている支那の思想のように、急に専務が憎むべき存在となって映り出した。だが、彼は自分の上役を憎むことが、ここでは彼自身の母国を憎んでいるのと同様な結果になるということについては忘れていた。然も、母国を認めずして上海でなし得る日本人の行動は、乞食と売春婦以外にはないのであった。
一〇
参木に老酒の廻り出した頃になると、料理は半ば以上を過ぎていた。テーブルの上には、黄魚のぶよぶよした唇や、耳のような木耳が箸もつけられずに残っていた。臓腑を抜いた家鴨、豚の腎臓、蜂蜜の中に浸った鼠の子、林檎の揚げ物に竜顔の吸物、青蟹や帆立貝――参木は翡翠のような家鴨の卵に象牙の箸を突き刺して、小声で日本の歌を歌ってみた。
「どうだ、お杉さん、歌えよ、恥しいのかい。何に、帰りたい、馬鹿をいえ。」
参木はお杉を引き寄せると片肱を彼女の膝へつこうとした。すると、肱が脱れて、がくりとお杉の膝の上へ顎を落した。