Classiques japonais avec furigana
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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
Lisez 何が私をこうさせたか (なにがわたしをこうさせたか) de 金子 ふみ子 (かねこふみこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 191 571 caractères · 383 écrans
人込みの中で騒ぎたてては面目ないという理窟をその時私は胸の中で考えていたのだが、実は振り放すには余りに惜しいような気もしていたのだ。
青年の手に自分の手を握られながら、私はじっとしていた。すると、青年は今一度、ぎゅっと力をこめて私の手を握りしめたが、今度は何だか四角な堅い紙を私に握らせた。私はそれも黙って受け取った。そして人知れず、こっそりと懐の中に蔵い込んだ。
一体それは何なのだろうか、はやく私は見たかった。で、帰りがけに、出口の明るい電灯の下で、そっと懐中から出して見た。
金縁小型に花模様のついた女持ちの、にやけた名刺に、青年の住所と瀬川という名が記されてあった。
暑中休暇が終ったので、私はまた浜松に帰って来た。なんだか後髪をひかれる思いで帰って来た。
夜だった。家のものは皆どこかへ出かけたと見えて、玄関が締めきってあった。が、私はよく勝手を知っていたので、庭の目隠しの下から手を差し込んで木戸の鍵を外し、便所の手洗鉢の傍から家の中に這入った。
暑いので、私はまず戸を開け放った。それから、汗に濡れた着物を脱いだ。汽車の中で何も食べなかったためかお腹が空いていたので、台所の戸棚を開けて食べものを探し、残り物で独り、御飯を食べていると、表通りに日和下駄の音がした。