Classiques japonais avec furigana
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じゅうにしこう
十二支考(下)〔全2冊〕
南方 熊楠
Lisez 十二支考(下)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) de 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 251 906 caractères · 495 écrans
次は槌だ。『譚海』一二に、日光山には走り大黒というあり、信受の者懈怠の心あらば走り失せてその家に座さず、殊に霊験ある事多し、これは往古中禅寺に大なる鼠出て諸経を食い敗り害をなせし事ありしに、その鼠を追いたりしかば下野の足緒まで逃げたり。鼠の足に緒を付けて捕えて死にたるよりそこを足緒というとぞ、足緒は足尾なり。さて死にたる鼠の骸に墨を塗りて押す時はそのまま大黒天の像になりたり。それより日光山にこの鼠の死にたる骸を重宝して納め置き、今に走り大黒とて押し出す御影なりと記す。一昨年某大臣、孟子がいわゆる大王色を好んで百姓とともにせんとの仁心より頼まれた惚れ薬の原料を採りに中禅寺湖へ往った時、篤とこの大黒を拝もうと心掛けて滞在して米屋旅館に、岩田梅とて芳紀二十三歳の丸ぼちゃクルクル猫目の仲居頭あり。嬋娟たる花の顔ばせ、耳の穴をくじりて一笑すれば天井から鼠が落ち、鬢のほつれを掻き立てて枕のとがを憾めば二階から人が落ちる。南方先生その何やらのふちから溢るるばかりの大愛敬に鼠色の涎を垂らして、生処を尋ねると、足尾の的尾の料理屋の娘というから十分素養もあるだろう、どうか一緒に走り大黒、身は桑門となるまでも生身の大黒天と崇め奉らんと企つる内、唐穴になって下山しとうとう走り大黒を拝まなんだ。