Classiques japonais avec furigana
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とりかじ
取舵
泉 鏡花
Lisez 取舵 (とりかじ) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 453 caractères · 15 écrans
僕は盲目の船頭に邂逅したことがある。」
その友は渠の背に一撃を吃して、
「吹くぜ、お株だ!」
学生は躍起となりて、
「君の吹くぜもお株だ。実際ださ、実際僕の見た話だ。」
「へん、躄の人力挽、唖の演説家に雀盲の巡査、いずれも御採用にはならんから、そう思い給え。」
「失敬な! うそだと思うなら聞き給うな。僕は単独で話をする。」
「単独で話をするとは、覚悟を極めたね。その志に免じて一條聞いてやろう。その代り莨を一本。……」
眼鏡越に学生は渠を悪さげに見遣りて、
「その口が憎いよ。何もその代りと言わんでも、与れなら与れと。……」
「与れ!」と渠はその掌を学生の鼻頭に突出せり。学生は直にパイレットの函を投付けたり。渠はその一本を抽出して、燐枝を袂に捜りつつ、
「うむ、それから。」
「うむ、それからもないもんだ。」
「まあそう言わずに折角話したまえ。謹聴々々。」
「その謹聴のきんの字は現金のきんの字だろう。」
「未だ詳ならず。」とその友は頭を掉りぬ。
「それじゃその莨を喫んで謹聴し給え。
去年の夏だ、八田潟ね、あすこから宇木村へ渡ッて、能登の海浜の勝を探ろうと思って、家を出たのが六月の、あれは十日……だったかな。