Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ちじょう
地上
島田 清次郎
Lisez 地上 (ちじょう) de 島田 清次郎 (しまだせいじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 175 250 caractères · 350 écrans
平一郎は涙を拭って校長室を出た。
校門を出るとき平一郎の背後で始業の鐘の音が冷徹な朝に響きわたって聞えた。灼熱し緊縮した頭脳の惑乱へその鐘の音は、ひとりで考えろ、深く、心の根元がどっしり落着くまで考えろ、といい聞かしてくれた。彼は街をどういう風に歩いたか意識しなかった。秋の朝の空気は冷やかで、彼の頬にひた/\押しよせては流れて行った。十六のこの秋まで根本から自分の生活を反省することのなかった自分である。彼は幼い頃に父を亡い、母のお光一人に育てられ、自分の世界を意識するようになった頃は、彼は「貧しい母子」の自分を認識した。(しかし自分はその貧しいことに弱り果てる弱者でない。)泉のように耐えない母の愛感は彼を「貧」のためにひがます代りに発奮のよい刺戟に変じさせていた。まことに貧しくても幸福だ。伸びゆく生命の過程を全心肉に生活していた彼である。彼はもはや幼年とは言われないであろう。山林の槲の木はたとえその木の年寿が若くともそこらに生い茂る雑草や灌木よりは偉大であるように、十六の平一郎は無意識に内より湧く生命のままに生きて来たが、はやくも若木は社会の制約に障えられねばならない。