Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ちじょう
地上
島田 清次郎
Lisez 地上 (ちじょう) de 島田 清次郎 (しまだせいじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 175 250 caractères · 350 écrans
涙を流し、ほんの僅かの間であるが、冬子の「妾としての生活」が苦しいものであるように思われてならなかった。(一体天野は本当に冬子を愛しているのだろうか。冬子は本当に幸福なのであろうか? ……幸福だとは思われない!)
早春の朝、平一郎は目覚めた。彼は母を求めて、そこにむずかる独り子の自分を揺すって起こす慈母の愛を求めて無意識に手を伸ばしたが、手答がなかった。窓の硝子越しに射す早春の覚束ない光が薄らに彼を照した。平一郎の魂が空虚に驚いて目を開いたのだ。(ああ自分はもう母を離れて遠い旅に来ているのだった。)彼は全身一種の緊張と霊感と寂しさに奮いたった。
「平一郎さん、もうお目が覚めなすって?」と玉が来た。
「お早う」
「お早うございます」平一郎が着物を着替えているうちに玉は床をあげてしまった。階下には冬子は見えなかった。玉は飯台をだして平一郎に朝食をすすめた。小さい台所の瓦斯鍋に味噌汁がたぎっている。彼は大嫌いな濃いどろどろの味噌汁をすすった。彼が朝飯をおえたところへ玉が呼びに来た。三畳の部屋の「秘密の道」から別邸の庭園わきの廻廊に出て彼は座敷に導かれた。一もと深く庭園の地に根を下した松の樹は、太陽の光熱を慕うように屋根の上に伸びあがっていた。