Classiques japonais avec furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lisez 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) de 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 108 647 caractères · 215 écrans
敗戦の悲傷は、厳然と残った伽藍に却って痛ましいものを感ずるのではなかろうか。祖宗の霊は安らかに眠ることは出来ない。国民の道義はすたれ、信仰の日は去ろうとしている。神々の黄昏が来て、ただ無信仰の眼に好奇的にさらされるであろう悄然たる古寺の姿を僕は想像するのである。
戦争は終った。斑鳩の地をはじめ大和一帯は、やがて観光地として世界の客人を招くであろう。観光地としての再生――僕らはかかる再生を喜んでいいのか、悲しむべきであるか。僕は近頃になってハイネの「伊太利紀行」の一節を再び思い出している。彼はこの古典の地を訪れ、「悲歌的に夢みながら廃墟の上に坐っている」伊太利人をしきりになつかしんでいる。目は病的に白く、唇は病的にかよわいが、高貴な面影を失わぬ伊太利人に、ハイネは近代における真の文明人をみた。というよりはそういう文明人の末路の姿に感傷の思いを寄せたと云った方がよかろう。これに反しここに観光地として訪れる漫遊の客人達は、たとい純白の高価なシャツを身につけ、すべてを現金で景気よく支払っても、廃墟に夢みる伊太利人に比べるなら一個の野蛮人にすぎぬではないかと断じている。