Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

Lisez 子を奪う (こをうばう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 292 caractères · 80 écrans

Aozora Bunko

……彼はまた障子を開いた。そして、その敷居際に腰を下した。

「寒くはないですか。」と彼は云った。

「いいえ。」と敏子は答えた。

彼は向うの言葉を待った。然し敏子は俯向いたまま何とも云い出さなかった。彼は心の中で言葉を探した。適当な言葉が見つからなかった。然し躊躇してるのはなお苦しかった。口から出まかせに云った。

「いろいろ苦労をかけて済みません。」

「いいえ。」と彼女は云った。落付いた調子だった。「私はこの子のために、ほんとに仕合せなことと思っております。」

そんなことを云ってるのではない、と彼は心の中で叫んだ。然しどう云い現わしていいか分らなかった。

「考えてみると、僕は何だか恐ろしい気がするけれど……。」

「私は安心しております。お祖母様もお……母様も、ほんとに御親切ですから。」

「僕もどんなに苦しんだか知れない。然し僕の意志ではどうにもならなかったので……。」

「いいえ、こうして頂けば、私は本望でございますもの。」

「随分苦しんだでしょう。」

「いえ、まだ何にも分かりませんから。」

そう云って彼女は子供の頭に頬を押しあてた。

彼は口を噤んだ。彼が彼女のことを云っているのに、彼女は故意にかまたは知らずにか、子供のことばかりを云っていた。