Classiques japonais avec furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lisez 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) de 小出 楢重 (こいでならしげ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 334 351 caractères · 657 écrans
左様な所業は何かしら非常な悪徳の一つとさえ見做されていて、敢えて行うものは、夜陰に乗じて、カンヴァスを風呂敷につつみ、そっと先生の門を敲くと云った具合であったらしい。又学生の分在であり乍ら文展に絵を運ぶと云う事は少年が女郎買いすると同じ程度に於て人目を憚ったものである。或は、むしろ、女郎買いの方は憚らなかったとも云えるが、文展出品は内密を主んじる風があった。
私などは、殊の外恥かしがり屋の故を以てか、浅草や千束町へは毎晩通っていたが、文展へ絵を出す如き行為は決してなすまじきものであると考えていた事は確かである。そして吾々はそれによってある気位いを自分自身で感じていたものだった。先ず鞭声粛々時代と云えば云える。東洋的大和魂がまだ吾々の心の片隅に下宿していたと云っていいかも知れない。
その私達ちの学生時代からたった十幾年経た今日、時代は急速に移って、鞭声粛々とは何んですかと訊ねられる事に立ち到った。今に大和魂と云った位いでは日本でも通じなくなる時代が来ないとも限らない。
勿論、画学生は数から云って、今とは到底比較にならない少数のものが、本当に苦労して勉強していたものであるが、私達ちの時代よりもっともっと以前にあっては、全くこれは話にならない処の苦労をなめた処の少数にして真面目な研究者があった訳であろう。