Classiques japonais avec furigana
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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Lisez 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) de 徳冨 蘆花 (とくとみろか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 742 caractères · 256 écrans
この上はただ速やかに戦地に帰らんと、ひたすら医の許容を待てるなりき。
思いすてて塵芥よりも軽かりし命は不思議にながらえて、熱去り苦痛薄らぎ食欲復するとともに、われにもあらで生を楽しむ心は動き、従って煩悩もわきぬ。蝉は殻を脱げども、人はおのれを脱れ得ざれば、戦いの熱病の熱に中絶えし記憶の糸はその体のやや癒えてその心の平生に復るとともにまたおのずから掀げ起こされざるを得ざりしなり。
されど大疾よく体質を新たにするにひとしく、わずかに一紙を隔てて死と相見たるの経験は、武男が記憶を別様に新たならしめたり。激戦、及びその前後に相ついで起こりし異常の事と異常の感は、風雨のごとくその心を簸い撼かしつ。風雨はすでに過ぎたれど、余波はなお心の海に残りて、浮かぶ記憶はおのずから異なる態をとりぬ。武男は母を憤らず、浪子をば今は世になき妻を思うらんようにその心の龕に祭りて、浪子を思うごとにさながら遠き野末の悲歌を聞くごとく、一種なつかしき哀しみを覚えしなり。
田崎来たり見舞いぬ。武男はよりて母の近況を知りまたほのかに浪子の近況を聞きぬ。(武男の気をそこなわんことを恐れて、田崎はあえて山木の娘の一条をばいわざりき)武男は浪子の事を聞いて落涙し、田崎が去りし後も、松風さびしき湘南の別墅に病める人の面影は、黄海の戦いとかわるがわる武男