Classiques japonais avec furigana
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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Lisez 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) de 徳冨 蘆花 (とくとみろか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 742 caractères · 256 écrans
九の一
列車は五間過ぎ――十間過ぎぬ。落つばかりのび上がりて、ふりかえりたる浪子は、武男が狂えるごとくかのハンケチを振りて、何か呼べるを見つ。
たちまちレールは山角をめぐりぬ。両窓のほか青葉の山あるのみ。後ろに聞こゆる帛を裂くごとき一声は、今しもかの列車が西に走れるならん。
浪子は顔打ちおおいて、父の膝にうつむきたり。
九の一
七月七日の夕べ、片岡中将の邸宅には、人多く集いて、皆低声にもの言えり。令嬢浪子の疾革まれるなり。
かねては一月の余もと期せられつる京洛の遊より、中将父子の去月下旬にわかに帰り来たれる時、玄関に出で迎えし者は、医ならざるも浪子の病勢おおかたならず進めるを疑うあたわざりき。はたして医師は、一診して覚えず顔色を変えたり。月ならずして病勢にわかに加われるが上に、心臓に著しき異状を認めたるなりき。これより片岡家には、深夜も燈燃えて、医は間断なく出入りし、月末より避暑におもむくべかりし子爵夫人もさすがにしばしその行を見合わしつ。
名医の術も施すに由なく、幾が夜ごと日ごとの祈念もかいなく、病は日に募りぬ。数度の喀血、その間々には心臓の痙攣起こり、はげしき苦痛のあとはおおむね々としてうわ言を発し、今日は昨日より、翌日は今日より、衰弱いよいよ加わりつ。