Classiques japonais avec furigana
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やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Lisez 山を思う (やまをおもう) de 石川 欣一 (いしかわきんいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 79 814 caractères · 157 écrans
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静かな山の真昼時、私は不思議な音を聞いた。ヒューヒューと、まるで笛である。峰を渡る風でもないし、岩燕の声でもなし、およそ私がそれまでに聞いたどんな音よりも可憐でもあり微妙でもある。何だろうと耳を傾け、息をとめると、その音はやむが、間もなく、また聞えて来る。が、しばらくして、私は馬鹿みたいにゲラゲラ笑った。この音は、私自身の鼻息だったのである。乾燥しきった高山の空気に、さっきまで汗と一緒に流れていた水っぱなが乾き、その一片が鼻毛にこびりついて、オルガンの瓣の役をしていたのである。
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八月に入って暑さはいよいよ激しくなって来た。私は、今年も行くことの出来ない山を思っている。山を急ぐことの嫌いな私は、短い休暇では山に登れないのである。
「短い休暇」とあるが、考えて見ると満洲事変の起った時以来、僕は夏休みをとっていない。旧体制式の夏休みというようなものを我々にゆるさぬ程、日本は大変動を続けているのである。それがたのしみで、一向に休みをとりたいと思わない。どうやら工面していた正月の休みも、こゝ数年来は中絶である。それでも富士山へ行ったり、近くの山を歩いたり、昔のことを考えたり、依然として山々との縁は切れていないから面白い。