Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans

Aozora Bunko

暫くして順一がむずかると、機械的に立ち上って、室の中をよいよいして歩いた。喜びも悲しみもないただ澄み切った順一の眼が、この上もなく淋しく思われてきた。順一が眠るとそれを布団に寝かして、自分は畳の上に寝そべった。背筋や足先がぞくぞく寒かったが、身を動かすのも嫌だった。

竜子が約束通りに早く帰って来ても、また、秋子の気分が大変いいと看護婦に云われても、彼は不機嫌に黙り込んでいた。

然し、実際秋子は気分がはっきりしてきた。腹痛も非常に遠のき、痙攣も襲って来なかった。その晩遅くまで眼を開いていた。わりにしっかりした言葉で、看護婦と話をした。

順造は横の方に寝転んで、雑誌を披いて二三頁飛び読みをしたり、ぼんやり天井板の木目を見守ったりした。凡てが不思議な気がした。妊娠や分娩や病気や乳母や看護婦や、現在眼の前の病室の事物までが、夢の中のことのように感ぜられた。そしてそれが、永久に続く事柄のように思われた。静かな静かな夜だった。しいんとした中に虫の声がしていた。遠い昔の思い出が籠っていそうな夜だった。秋子の大きな腹ももう気にかからなかった。

ただあるがままでよかった。