Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lisez 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 193 050 caractères · 383 écrans

Aozora Bunko

それでもどうかすると、思いがけなく状袋に入れた何円かの紙幣と、その上、先方からお菓子まで貰って帰ることもあった。そんなときの嬉しさは無上であった。ほっとする母の顔には「これで幾日かはお米も買える」という安心がありあり見えた。お米はその頃、一升十六、七銭であったと思う。南京米だと三、四銭は安かった。ヒキ割り麦、押し麦などは、もすこし安い。だから母は、零落してからは、白米と麦を七分三分に交ぜていた。

何しろ母は育ちざかりを大勢抱え、一夜に戸部の場末に落ちて、貧乏生活の初歩から経験し出していた折なので、まず白米に麦を交ぜるぐらいな智恵が、耐乏決心の関の山な覚悟だったろうかと思われる。

その頃の事といえ、わが家の戸籍などを人前に出すのもどうかと思うが、母に苦労させた喰べ盛りの口数を示すために、一応ここで幼い弟妹たちの名を並べてみるなら、まず長男のぼく十四を頭に、次男素助七つ、長女きの十二、次女カエ九つ、三女浜四つ、四女千代一つ、という揃いも揃ってヒヨコばかりが六人もいたのである。ほかになお菊、国、スエの女子三人は乳児のうちに亡くなってい、三男の晋はまだ生れていなかった。