Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

Lisez 恨なき殺人 (うらみなきさつじん) de 宮島 資夫 (みやじますけお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 27 611 caractères · 56 écrans

Aozora Bunko

夏の夕日が西の空に燃えて、夕靄が谷間や山蔭の村の上に漂って、青葉に包まれた小山の頂きが、浮ぶように見えているのは、全く平和な姿らしくも眺められた。けれども彼は、その狭苦しい山村で、単調な生活をしている人々のことを思わずにはいられなかった。

若葉の萌える春のころだった。午休みの時に、彼がこの頂きに登って来たとき、鍛冶屋をしている竹という若い男が、後からついて登って来た。その男は少し馬鹿のようではあったが、正直で優しい気質を有っていた。池田が頂きの三角点の石に腰を下している傍に立って、

「東京はどっちの方でやすべえ」と訊いた。

はるかに遠く、水戸の海が霞の奥にどんよりと光っていた。

「あすこが水戸だから、もっと此方の方だろう」と池田は右の方を指した。竹は、

「俺も東京さ行って暮してえな」と嘆くように言った。

東京に行けば、面白い生活が出来ると思っているこの男は、まだ幸福だと思った。池田はこの山に登ると、何時も竹の言ったことを思い出した。自分なんかは何処へ行くアテもなく、唯この山で、不愉快な生活の中に、僅かな安逸を貪っているのだと思うと、限りなく退屈になって来た。