Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Lisez 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 43 279 caractères · 86 écrans
私は恰も鉄が磁石に引きつけられるように、始終彼女の方へ気を惹かれた。そして私は、じっと坐り込んでる彼女から、少し離れた所をぶらついたり、食事の時にはやはり一緒の餉台に坐ったり、彼女の側でいつまでも新聞を見てる風を装ったりした。
そういう私に、彼女は殆んど一瞥をも与えなかった。二三日考えてみるという言葉を、常住不断に実行してるかのようだった。いつも口をきっと結び眼を見据えて、額に冷酷な専心の影を漂わしていた。そして時々思い出したように、三歳になる末っ児の達夫を、いきなり膝の上に引き寄せ、その上に屈み込んで頬をくっつけながら、力限りに抱きしめた。達夫が苦しがっていくら蜿いても、彼女はなかなか離さなかった。それでも一度手を離すと、もう忘れてしまったかのように見向きもしないで、自分一人の沈思に耽っていった。かと思うとまた三人の子供達を呼び集めて、一番好きな御馳走を拵えてあげようとか、一番好きな玩具を買ってあげようとか、一番好きな遊びごとをしてごらんなさいとか、兎に角子供の一番喜ぶことを尋ねておいて、女中に云いつけてその通りにさせた。けれどもやがてまた、自分自身の中に潜み込んで、苦しそうに眉根を寄せるのだった。