Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 190 406 caractères · 381 écrans

Aozora Bunko

「書面にでも致して、夜中にでもそッと、お届けいたしましょうか」

「いや、書中では」

元康は、築土の裏口を振り向いたが、また何か、思い直しているふうであった。

甚七は、彼の眼であり、また、天下を知る耳であった。

六歳の頃から、織田家へ、また今川家へと、彼の少年時代は、流浪と、敵国の中に送り、その体は、人質として、自由を許されずに過ぎて来た。今日もまだ、その束縛は解かれていない。

眼も、耳も、知性も、人質はふさがれていた。彼自身が努めなければ、誰も、叱りも励ましもしなかった。

――が、結果は反対に、彼が人いちばい旺んな志慾の持主となったのは、幼少時から、余りにもその育ち盛りの眼や耳や行動や知性を、他から抑制され過ぎたためでもあった。

四年も前に、家人の鵜殿甚七を、追放のていにして、諸国へ放ち、居ながら諸州の動静を知ろうとしたなど――その大きな他日の慾望の芽を、もうそろそろ現わしていた一例ともいえよう。

「さての。……ここでは人眼につくし、邸では家人どもが不審ろうし……。そうだ、甚七、あれへ参ろう」

元康は、指さして、先へ大股に歩きだした。

彼の今住んでいる質子邸は、府中のお館を繞る大路小路のうちでも、最も静かな少将之宮町の一角にあった。