Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 190 406 caractères · 381 écrans
ここよりは二里も奥の、国境の先の敵地、寺部の城へ奇襲せよ、という意外な命令なのであった。
「寺部へ、寺部へ!」
口々に云って励まし合ったが、大将元康のいる部隊のほかは、誰にも、何でそんな敵の奥地へ深く襲せて行くのか――まったくその夜の闇のように、元康の意中がわからなかった。
夕立のように、馬も人も、足なみが迅くなった。
二千の将兵の具足が、足音と共に、ざッざッざッと鳴った。
千余駄の馬の口輪や金具が、馬のいななきと一緒に、鏘々とひびいた。
それが黒々と縦隊になって、街道を押して行くのである。行くほどに間もなく、左手の山に、味方の孤城、大高の白壁が見え、柵門が望まれた。
「オオ、火を振っている! 狭間から松明を振っている!」
「味方だ」
「餓死に頻している城の者だ」
駈けつけつつ、それを山に認めた松平勢は、誰も彼も、眼がしらが熱くなるのを覚えた。
ここに味方の――千余頭の小荷駄を積んだ兵糧は来たのだ。
そして、二千の兵も加勢に。
もう半年以上も、あの孤塁に拠って、四面を敵の砦につつまれて、木の皮を喰っている城方の人々は、この夕べ、
(援軍、近し!)
と、知って、どんなに歓喜したことか。