Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lisez 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 169 810 caractères · 345 écrans

Aozora Bunko

宇治は彼を信用しなかったわけではない。ただ万一という事もあった。あんな事を高城に言ったのも、本心というよりは露悪的な気持の方が勝っているように思われた。高城が二人に共通した罪悪感で彼に寄り添おうとしているのが、彼にはただ鎖のように重苦しかったのだ。(茶番を一々本気にしてやがる)並んで歩く高城の顔を盗み見ながら、宇治は一瞬鋭い憎悪が彼に湧いて来るのを感じていた。しかし天に唾するようにそれは厭な感じを伴って彼の心に戻った。……

それからずいぶん長い間歩いたような気がする。梢を洩れる太陽の光はやや薄れ、蝉に似た虫の啼声が林の奥から流れて来る。花田のことをぼんやり考えていた。花田に逢えば花田は何と思うだろう。花田の驚く顔だけは想像出来たが、その先は頭に浮んで来なかった。女と共にいて原隊に戻らぬのも、言わば単純な情痴ではないだろう。単に情痴ならばあのような破目に落ちずとも、少くとも彼ほどの男なら、もっと悧口に身を処することが出来る筈なのだ。もっと深い処で彼は身を賭けたに違いないのだ。しかしその詳細は判らない。女と一緒になり原隊を離反した。その事件は驚くほど単純だが、そのぐるりにはさまざまの陰影が暗く尾を引いていて、どんな事を花田が考え、そしてそれを信じたのか、何も判っていないのだ。