Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lisez 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 169 810 caractères · 345 écrans
「梨を食ったというのは、本当か」
「本当らしいです」
山下というのは、その一等水兵の名である。吉良兵曹長の顔に、急に怒りの表情があらわれた。
「梨を食うなということは、度々兵隊に言ってあるではないか。近頃の兵隊は、気合は入っていない癖に、悪いことは一人前する」
押しつぶされたような声であった。じっと私の顔を凝視しながら、
「下士官も悪い。下士官がだらしないから、兵隊が我ままをする。俺の命令を聞きたくなければ、聞きたくなるようにしてやる。村上兵曹。兵隊を整列させろ」
私は黙っていた。一人が梨を食ったというかどで、残り全部の兵隊が制裁されることはまことに意味が無いことだ。数日間の此処での生活で、私は私の部下にあたる暗号兵たちに、ほのかな愛情を感じ始めていた。意味なく制裁されるような目に合せたくなかった。表情を変えず、私は頑固に押し黙っていた。吉良兵曹長は急に横をむくと、送信所の方に急ぎ足で入っていった。
私は元にむいて、食事をつづけた。私は、応召以来、佐鎮の各海兵団や佐世保通信隊や指宿航空隊で、兵隊として過ごして来た。さまざまの屈辱の記憶は、なお胸に生々しい。