Classiques japonais avec furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 112 073 caractères · 223 écrans
六郎兵衛は顔を歪め、それからぎらぎらと眼を光らせた。「やつらを去らせよう」と彼は云った、「道場などは、もしうまくゆかぬようなら、道場などはやめてしまってもいい、おれはもっと大きな蔓をつかんでいる、野中、おれはこの蔓を必ずものにしてみせるぞ」
六郎兵衛は明らかに混乱していた。しかし又五郎は感動した。六郎兵衛がそんなようすをみせたことは、これまでに一度としてなかった。
彼はいつも冷やかに、きりっととりすましていた。自分のまわりに眼にみえない垣をめぐらして、そこから中へは誰も近よせないし、自分もそこから出ようとはしなかった。その彼がいま自分をさらけだしてみせた。全部ではないし、まだどこかにごまかしがあるようだ、けれども彼は、初めて自分の弱さを告白した。
――妹をかこいものにしても、楽な生活や充分な酒食を欠かすことができない。
そのために苦しいおもいをし、自分で自分を責めながら、しかも、やはり妹に身を売らせていたという。おれは代価を払った。という六郎兵衛の気持は、又五郎にはおよそ理解できるように思えた。
「二人でやろう、野中」と六郎兵衛は云った、「おれは必ず世に出てみせる、野中にもむろん、槍を立てて歩ける身分を約束しよう、おれが無根拠にこんな約束をする人間でないことは、野中はわかってくれるだろう」