Classiques japonais avec furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lisez 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 492 caractères · 156 écrans
わが心は草のごとく撃(うた)れてしおれたり。われ糧(かて)をくらうを忘れしによる」
しかし、不吉なことはまた続いた。或る日、暴風の夜が開けた翌日、庭の池の中からあの鈍い亀が逃げて了っていた。
彼は妻の病勢がすすむにつれて、彼女の寝台の傍からますます離れることが出来なくなった。彼女の口から、痰(たん)が一分毎に出始めた。彼女は自分でそれをとることが出来ない以上、彼がとってやるよりとるものがなかった。また彼女は激しい腹痛を訴え出した。咳(せき)の大きな発作が、昼夜を分(わか)たず五回ほど突発した。その度に、彼女は自分の胸を引っ掻(か)き廻して苦しんだ。彼は病人とは反対に落ちつかなければならないと考えた。しかし、彼女は、彼が冷静になればなるほど、その苦悶の最中に咳を続けながら彼を罵(ののし)った。
「人の苦しんでいるときに、あなたは、あなたは、他(ほか)のことを考えて」
「まア、静まれ、いま呶鳴(どな)っちゃ」
「あなたが、落ちついているから、憎らしいのよ」
「俺が、今狼狽(あわ)てては」
「やかましい」
彼女は彼の持っている紙をひったくると、自分の啖を横なぐりに拭(ふ)きとって彼に投げつけた。