Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lisez 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 492 caractères · 156 écrans
「こらッ、あの子を泣かしちゃいかんよ」
私はこんなに自分の次男によく云ったが、次男は、
「あの子、泣きみそなんだよ」と云ってさも面白そうにまた泣かした。高次郎氏の所へ一年に一度年賀の挨拶に私の方から出かけて行くのも「今年もまた何をし出かすか分りませんから、どうぞ宜敷(よろし)く」と、こういう私の謝罪の意味も多分に含んでいた。この家は門の戸を開けると一歩も踏み込まないのに、すぐまた玄関の戸を開けねばならぬという風な、奇妙な面倒さを私は感じ敷居も年毎に高くなったが、出て来るみと子夫人の笑顔だけは最初のときと少しも変らなかった。
高次郎氏とも私は顔を合すというような機会はなかった。月の良い夜など明笛(みんてき)の音が聞えて来ると、あれ加藤の小父さんだよと子供の云うのを聞き、私も一緒に明治時代の歌を一吹き吹きたくなったものである。
高次郎氏が看守長となった年の秋、漢口(かんこう)が陥(お)ちた。その日夕暮食事をしていると長男が突然外から帰って来て、
「加藤さんところの小父さん、担架に乗せられて帰って来たよ。顔にハンカチがかけてあった」と話した。
私と家内は咄嗟(とっさ)に高次郎氏の不慮の死を直覚した。