Classiques japonais avec furigana
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すいま
水魔
田中 貢太郎
Lisez 水魔 (すいま) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 727 caractères · 24 écrans
それは眼と眉の間の晴ばれとした、そして、眼にしっとりとした潤いのある水の中へ飛びこんだ彼の小女であった。その羽織も鮮麗な青光のする友禅模様の羽織であった。彼は箸を執り落した。
「お爺さん、もう好い、いくらだ」と、彼は慄えながら云った。
「じゃ、お酒はよしますか」
「好い、好い、いくらだ」
「二十銭戴きます」
山西は手を顫わして蟇口から十銭札を二枚出すと、投げるように置いてあたふたと逃げだした。そして、造花屋のことなどは忘れて、人通りの多い賑やかな方へ賑やかな方へと往ったが、気が顛倒しているので方角が判らない。同じ路次へ入ったり出たりした後に、やっと人通りの多い賑やかな街路へ出て、やや心を落つけることができた。……それにしても、水の中へ飛びこんだ女が己の前に姿を見せるのは、たしかに己に恨みがあるからだ、と思った。彼はたまらなく恐ろしかった。
と、電燈の明るいバーが眼に注いた。彼は急いでその中へ入った。二条か三条かに寒水石の食卓を据えた店には、数多の客が立て込んでいた。彼はその右側へ往って腰をかけた。
「何人か来てください、お客さんですよ」
左側の一人の客の前へ立って会計をしていた給仕女が、帳場の方を見ながら云った。