Classiques japonais avec furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lisez 沼夫人 (ぬまふじん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 541 caractères · 78 écrans
二十五
「さあ、これへ乗せよう。」
まざまざと見るには堪えぬから、その布で包んだまま、ただ結目を解いただけで、密と取って、骨を広葉の只中へ。
葉先を汀へ、蘆摺れに水へ離せば、ざわざわと音がして、ずるりと辷る、柄を向うへ……
「南無阿弥陀 南無阿弥陀。」
と殊勝に正吉が、せめ念仏で畳掛けるに連れて、裂目が鰭のように水を捌いて行く、と小波が立って、後を送って、やがて沼の中ばに、静と留まる。
そのまま葉が垂れると、縋りつく状に、きらきらと水が乗る、と解けるともなしに柔かに、ほろほろと布が弛んで、細長い包みの裾が、ふッくりと胸になり、婦が臥した姿になる。
思出して、はっと目を塞いだが、やがて見れば、もう沈んだ。
途端に、ざらざらと樹が鳴って、風が走る。そよ風が小波立てて、沼の上を千条百条網の目を絞って掛寄せ掛寄せ、沈んだ跡へ揺かけると、水鳥が衝と蹴たごとく、芭蕉の広葉は向うの汀へ、するすると小さく片寄る。
二十五
……きょ、きょら、きょきょら、くららっ!……
と、しばらくはただ鳥の声。
熟と沼の面を見ていると、どこかに、その人の顔がある。が、水の皺が揺っては消し揺っては消す――そうかと思うと、その水紋の揺めく綾が、ちらちらと目になって、瞳が流るるようでもある。