Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ぼくとうきだん

濹東綺譚

永井 荷風

Lisez 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 57 666 caractères · 114 écrans

Aozora Bunko

然し今、これを説いてもお雪には決して分ろう筈がない。お雪はわたくしの二重人格の一面だけしか見ていない。わたくしはお雪の窺い知らぬ他の一面を曝露して、其非を知らしめるのは容易である。それを承知しながら、わたくしが猶躊躇しているのは心に忍びないところがあったからだ。これはわたくしを庇うのではない。お雪が自らその誤解を覚った時、甚しく失望し、甚しく悲しみはしまいかと云うことをわたくしは恐れて居たからである。

お雪は倦みつかれたわたくしの心に、偶然過去の世のなつかしい幻影を彷彿たらしめたミューズである。久しく机の上に置いてあった一篇の草稿は若しお雪の心がわたくしの方に向けられなかったなら、――少くとも然う云う気がしなかったなら、既に裂き棄てられていたに違いない。お雪は今の世から見捨てられた一老作家の、他分そが最終の作とも思われる草稿を完成させた不可思議な激励者である。わたくしは其顔を見るたび心から礼を言いたいと思っている。其結果から論じたら、わたくしは処世の経験に乏しい彼の女を欺き、其身体のみならず其の真情をも弄んだ事になるであろう。わたくしは此の許され難い罪の詫びをしたいと心ではそう思いながら、そうする事の出来ない事情を悲しんでいる。