Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lisez 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 57 666 caractères · 114 écrans
五
炊事場では又しても水の音がしている。すみ子は真実夜通し話をするつもりと見えて、帯だけ解いて丁寧に畳み、足袋を其上に載せて押入にしまい、それから茶ぶ台の上を拭直して茶を入れながら、
「わたしのこうなった訳、先生は何だと思って。」
「さア、やっぱり都会のあこがれだと思うんだが、そうじゃないのか。」
「それも無論そうだけれど、それよりか、わたし父の商売が、とてもいやだったの。」
「何だね。」
「親分とか侠客とかいうんでしょう。とにかく暴力団……。」とすみ子は声を低くした。
五
梅雨があけて暑中になると、近鄰の家の戸障子が一斉に明け放されるせいでもあるか、他の時節には聞えなかった物音が俄に耳立ってきこえて来る。物音の中で最もわたくしを苦しめるものは、板塀一枚を隔てた鄰家のラディオである。
夕方少し涼しくなるのを待ち、燈下の机に向おうとすると、丁度その頃から亀裂の入ったような鋭い物音が湧起って、九時過ぎてからでなくては歇まない。此の物音の中でも、殊に甚しくわたくしを苦しめるものは九州弁の政談、浪花節、それから学生の演劇に類似した朗読に洋楽を取り交ぜたものである。ラディオばかりでは物足らないと見えて、昼夜時間をかまわず蓄音機で流行唄を鳴し立てる家もある。