Classiques japonais avec furigana
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Lisez 狂い凧 (くるいだこ) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 111 430 caractères · 226 écrans
昔からそうでしたかい?」
加納のその質問は栄介に向けられていた。栄介はぼんやりと眼を見開いた。
「そうだね。僕は兄弟だから判らないけれども――」
栄介はコップに手を伸ばした。
「あったかも知れないな」
城介が部隊長室で拳銃を中田軍医につきつけている状況を、私は頭に思い描いていた。映画やテレビでそれに似た情景を見たせいもあるだろう。それはある程度の迫真力で想像出来た。
「なおって帰還したいと思う。しかしあんな部隊長に強制されて入院するのはイヤだ。そんな感じというか意地というか、彼にはあったんじゃないかと思うね」
加納は視線を栄介から私に移した。
「彼は強制されたくなかったんだ」
「城介君は、いや、皆は、早く帰りたかったんだろうね」
「そうでもなかった。もっと不安定な気持でしたよ」
加納は答えた。
「内地に帰れるということは、帰還要員に指名されて以来、そう嬉しいものじゃなくなった。何年も生死を共にした連中と一応別れてしまわねばならぬ気持、それから忘れられた家庭に戻って行く不安。そりゃうちから手紙は来ますよ。紋切型のね。こちらは元気でやっているから、後顧なく国のために働いて呉れ、というふうなのばかりで、具体的に内地はどうなっているのか、どんな生活をしているのか、帰還してそれにおれたちが直ぐ適応出来るのか、のけ者扱いにされる