Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lisez 私本太平記 (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 598 caractères · 254 écrans

Aozora Bunko

俊基は、得知れぬ物に腰をおろした。こうなっては、運を天にまかせているしかないと思う。

「……さても、われながら、数奇な生涯を見るものだ」

公卿に生れ、殿上に仕えてきた身が、なにを求めて、こんなあさましい窮地に自身を追いこめて来たのやら。

と思いはしても、この期となって、それを悔いたりする彼ではなかった。

沸らすものは、むしろそれとは反対な志操への信仰だった。志士的な熱情だった。

この味噌倉の闇へも、はや死の手は刻々に近づきつつあるかもしれない。

しかし、じぶんの亡魂はかならず、北条幕府の滅亡を見るだろう。と考えて、彼の胸の悲歌は、笑いをふくんだ。そして自身の死もまた、荘厳な国の犠牲とかがやき観えて来るのだった。

「弁ノ殿」

扉のすきから、外の豊麻呂が、小声で告げた。

「お気づかいなされますな。あの火の音は、捕手どもをくらますため、散所の者が、わざと二、三ヵ所に放ったもの。炎は、遠くでございますから」

いわれて、気づいた。

俊基が上を仰ぐと、棟木の隙や屋根の破れ目に、赤い火光が映じている。遠いといったが、バチバチ火のハゼ音まで耳につく。

そのうちに。

「すわ」