Classiques japonais avec furigana
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ろうば
老婆
小川 未明
Lisez 老婆 (ろうば) de 小川 未明 (おがわみめい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 436 caractères · 11 écrans
婆さんは中から薄青い紙に包んだものを取出して、冷たな調子でいった。
「私は持病が起るとこれを飲むと骨節の痛むのが止る。これは病院にいる人がくれた毒薬じゃ。これを飲めば一思いに楽になるからそうなさい。」と私の手に渡した。
よく見と、アヘンだ。私は頭から冷水を浴びせられたよりも戦い上ったが、此処だと思って、度胸を据えて、戦える指頭で皺になった薄青い袋から小さな紙包を摘み出して、包を開いて見ると中に白い粉薬が小指の頭程入っていた。私はその白い粉薬を見詰めて、何といってよいか。この時こそ婆さんは落窪んだ眼を箒から放して、私の顔の上に落していた。
何? 戸棚の隅には鉄棒が隠してあるんだ! と心に幾たびか叫んで見たが、この粉薬から眼を放してきっと老婆の顔を見返す勇気が出なかった。私は白い粉薬を見詰ていると、漸々気が変になって、意識が茫然として来て、この儘この粉薬を自分の口に入れはしまいかと疑った。――この時私は敢て顔を上げては見なかったが――。
老婆は私が何うするかと思って、冷かに睨んでいるのが瞭々と分った。
もう大分夜が更けたらしい。