Classiques japonais avec furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lisez 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 52 046 caractères · 104 écrans
の隔離を振返って今更改めてそれを説明せよと云うこんな無慈悲な事はない、無理な事はない。
もともと自分は己れを信ずる事のできぬ者である。自分は今までに一度だって世間に対して厚面しく何事をも主張したり教えたりした事はない。自分はただ訴えたばかりだ。泣いたばかりだ。しかし狂犬のように吠える事を欲せず、残の蟲の如くに出来得べくば聞く人の耳に逆わないようにと心掛けたばかりである。それも強いて耳を傾けてくれと強請ったのではない。もし聞いてくれる人があったら非常に感謝する代り、聞いて呉れないからとて怒りも悲しみもせぬ。釈迦や孔子や基督や、世界に二度現われない偉大な人物が人間と名のつくものは必ず耳を傾けてしかるべき彼れ程正しい道をば、あれ程熱心に献身的に説いて聞かしてさえも、人間は一向に良くなって行くような様子を見せないではないか。いつも相変らず罪の世の中、相変らず澆季の時代だ。釈迦でも孔子でもない小さな人間が、いか程躍起になって騒いでも、それが世に聞かれよう筈がないのは初めから解りきった話だ。解りきった話だから、自分は今日まで一度も宗教家や道徳家や教育家なぞになりたいという考えを起した事はない。