Classiques japonais avec furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lisez 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 52 046 caractères · 104 écrans
自分はこの頃その感情と境遇の矛盾に立って、それから生ずる不安の念をどうして静むべきものかを頻りに思い悩んでいる。
ここに世の中の凡ての事を軽く視てその成り行きに任すと云う極めて不真面目な態度がある。そう物事を生真面目に堅苦しく生野暮に考えても駄目だ。物事はなるようにしかなら無いと云う、つまり動揺に甘じ朦朧不定不確実に安心する消極的の自暴自棄である。時代と群集に対して個人の意志人格の力を極めて小さなものと諦め、しかもそれを憤らずに嘲る事である。好んで嘲る訳ではないが、憤った処で及ばぬ事と自分の力なさと助けなさとを能く知抜いている為めに、憤る訳にも行かないその怨恨――自分に対する怨恨を自分から慰めようとする結果が、止むを得ず嘲笑と云う逃げ道を見出すに至る事である。
こうなると、失敗もそれほど気にはならない代り成功もまたさほど嬉しくない。失敗は自分の力の足りない事を無論証拠立てているのであるが、しかし最初から自分を其様に力のあるものと自惚れさえしていなければ左程失敗せずにも済む事だし、また成功は自分が偉いのではなくて、世間が勝手次第に自分の実際よりも以上の価値をつけたので、乃ち買被ったものと見て仕舞えば、残る処は世間が頼まれもせぬのにその愚昧その不注意を表白したと云う事になるばかりだ。