Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ばらふじん
薔薇夫人
江戸川 乱歩
Lisez 薔薇夫人 (ばらふじん) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 967 caractères · 19 écrans
一
一
青山浩一は、もと浜離宮であった公園の、海に面する芝生に腰をおろして、そこに停泊している幾つかの汽船を、ボンヤリと眺めていた。うしろに真赤な巨大な太陽があった。あたりは見る見る夕暮の色をおびて行った。ウイーク・デイのせいか。ときたま若い二人づれが通りかかるほかには、全く人けがなかった。
伯父のへそくりを盗み出した五万円は、十日間の旅行で遣いはたしてしまった。ポケットには、辛うじて今夜の家賃に足りるほどの金が残っているばかりだ。
温泉から温泉へと泊りあるいて、二十一才の彼にやれることは、なんでもやって見たが、どれもこれも、今になって考えると、取るに足るものは一つもなかった。あの山、この谷、あの女、この女、ああつまらない。生きるに甲斐なき世界。
伯父の家へは二度と帰れない。勤め先へ帰るのもいやだ。自転車商会のゴミゴミした事務机と、その前にたち並んでいる汚れた帳簿を思い出すだけでも、吐き気を催した。
暮れて行く海と空を、うつろに眺めていると、またあの幻が浮かんで来た。空いっぱいの裸の女、西洋の絵にある聖母と似ているが、どこかちがう。もっと美しくなまめかしい。