Classiques japonais avec furigana
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らしんのにょせん
裸身の女仙
野村 胡堂
Lisez 裸身の女仙 (らしんのにょせん) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 437 caractères · 29 écrans
五十両の手切れでお鳥は旗本へ
それでも、昼は大したことはありません、が、同じ小屋の中に眠る夜は、お鳥に取っては、たまらない嫌悪でした。本能的な不安の中にも、疲れと若さに誘われて、ウトウトと寝付くと、岩吉の毛むくじゃらな手が、お鳥の腕を押えて居たり、岩吉の髭面が、お鳥の頬とすれすれに、息と息とが絡み合って居ることさえ稀では無かったのです。
お鳥は驚いて飛起きましたが、夜が明ける迄は一寸も小屋の外へは出してくれません。何べんか、里へ逃げ出そうとしましたが、裸体では何うすることも出来ず、それに岩吉は口癖のように、
「お前が里へ出たら、一ぺんに打ち殺されるぞ、間違ってもそんな気を起すな」
と言う言葉に脅やかされて、何辺か思い立っては、果し兼ねていたのです。
併し最後の時は来ました。ある夏の夜、岩吉の執拗な悪戯は、到頭、山の処女の恐怖を、腹の底から揺り覚しました。
お鳥はその時、十五か、精々十六だったのでしょう。我慢の出来ない岩吉の腕から脱け出すと、漆のような闇の山路を、全く当もなく駈けて出たのでした。
五十両の手切れでお鳥は旗本へ
その晩、信州路を廻って、散々の不入に悩まされた軽業の一座が、安泊りに入る路用もなく、碓氷峠の出口に、古幟を天幕にして、馴れた野宿をして居りました。