Classiques japonais avec furigana
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ていそうもんどう
貞操問答
菊池 寛
Lisez 貞操問答 (ていそうもんどう) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 200 240 caractères · 399 écrans
二
」と訊いた。
二
夫人は、良人のことをいわれると気むずかしそうに、眉をひそめつつ、
「前川のことなんか、もう結構よ。私、二人の子供と、たった一人の男を相手に、もう十五年も暮して来たのよ。前川なんか、何の刺戟でもないわ。あの人は、英国流の温厚な紳士で、そして無精で、本ばかり読んでいて。」
「それでけっこうな旦那様じゃありませんか、貴女の自由をちっとも束縛しない……」
「貴君は、なぜいやがらせばかりおっしゃるの。若い方は、そんなふうな物云いはしないものよ。」
夫人は、艶めかしくいうと、肩もすれすれに、青年に近よって、
「主人と一しょになんか来れば、この美しい景色が、台なしになってしまうわ。」そっと青年の肩に手を置いた。
「これ、りんどうじゃないでしょうか。」彼は、突如、路傍の紫の花に、手をさし出すことで、巧みに夫人の手から離れた。
ホテルの喫茶は、二階の食堂の廊下に在った。そこから、このあたり一帯の異国情緒の風光が一望され、見晴しが美しいのである。
二人は、窓際に向い合って席に着いた。
近代的で、スポーツマン・タイプで、清秀で明るい感じのこの青年は、綾子夫人の母方の遠縁に当るという。