Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

どうせんかいじへん

銅銭会事変 短編

国枝 史郎

Lisez 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 106 745 caractères · 216 écrans

Aozora Bunko

それから茶屋を出て行った。

「銅銭会の茶椀陣」老人の言葉をなぞって見たが、弓之助には意味がわからなかった。しかし何んとなく心に掛かった。意味を確かめて見たかった。そこで老武士の後を追った。

もうそれは夕暮れであった。花見帰りの人々が、ふざけながら往来を練っていた。老武士はズンズン歩いていった。足は谷中へ向いていた。この時代の谷中辺はただ一面の田畑であった。飛び飛びに藁葺きの百姓家があった。ぼんやり春の月が出た。と一軒の屋敷があった。大名方の控え屋敷と見え、数寄の中にも厳めしい構え、黒板塀がめぐらしてあった。裏門の潜戸がギーと開いた。老武士の姿が吸いこまれた。

「いったい誰の屋敷だろう?」ここまで尾行て来た弓之助は、しばらく佇んで眺めやった。少し離れて百姓家があった。そこで弓之助は訊いて見た。

「大岡様のお屋敷でございますよ」

「ああそうか、大岡様のな」

弓之助は礼をいって足を返した。

「享保年間の名奉行、大岡越前守と来たひには、とても素晴らしい人傑だったが、子孫にはろくな物は出ないようだ。今の時代に大岡様がいたら、もっと市中は平和だろうに。……ナーニ案外駄目かもしれない。