Classiques japonais avec furigana
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かげろうざ
陽炎座
泉 鏡花
Lisez 陽炎座 (かげろうざ) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 33 381 caractères · 67 écrans
た。
人情、なぜか、筵の上のその皓体に集らせたくないので、背後へ、町へ、両の袂を叩いて払った。
そして、この血に餓えて呻く虫の、次第に勢を加えたにつけても、天気模様の憂慮しさに、居ながら見渡されるだけの空を覗いたが、どこのか煙筒の煙の、一方に雪崩れたらしい隈はあったが、黒しと怪む雲はなかった。ただ、町の静さ。板の間の乾びた、人なき、広い湯殿のようで、暖い霞の輝いて淀んで、漾い且つ漲る中に、蚊を思うと、その形、むらむら波を泳ぐ海月に似て、槊を横えて、餓えたる虎の唄を唄って刎ねる。……
この影がさしたら、四ツ目あたりに咲き掛けた紅白の牡丹も曇ろう。……嘴を鳴らして、ひらりひらりと縦横無尽に踊る。
が、現なの光景は、長閑な日中の、それが極度であった。――
やがて、蚊ばかりではない、舞台で狐やら狸やら、太鼓を敲き笛を吹く……本所名代の楽器に合わせて、猫が三疋。小夜具を被って、仁王立、一斗樽の三ツ目入道、裸の小児と一所になって、さす手の扇、ひく手の手拭、揃って人も無げに踊出した頃は、俄雨を運ぶ機関車のごとき黒雲が、音もしないで、浮世の破めを切張の、木賃宿の数の行燈、薄暗いまで屋根を圧して、むくむくと、両国橋から本所の空を渡ったのである。