Classiques japonais avec furigana
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あまよぞうし
雨夜草紙
田中 貢太郎
Lisez 雨夜草紙 (あまよぞうし) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 029 caractères · 14 écrans
存在が意識せられるに過ぎなかった。
雨の音はもう聞えなかった。彼は二本目の煙草を点けたところで、その煙が円い竹輪麩を切ったように一つずつ渦を巻いて、それが繋がりながら飛んで往くのに気が注いた。彼は不思議な珍らしい物を見つけたと云う軽い驚異の眼でそれを見ながら、ゆっくりゆっくり煙を吐いた。煙はやはり竹輪麩のように渦を巻いて、それが連続しながら天井の方へ昇って往った。そして、その靡きがぴったり止んで動かなくなったかと思うと、その煙の色がみるみる濃くなり、それが引締るようになると、ものの輪廓がすうと出来た。肩の円みと顔が見えて、仙台平の袴を穿いた男が眼の前に立った。三造はその中古になった袴の襞の具合に見覚えがあった。
「どうだ、山田」
と、前に立った人は懐しそうに云って、机の横に胡座をかくように坐り、
「伯の遺稿は、もうだいぶん進んだかね、あれ程有った伯の政友同志は、皆伯を棄て去った中で、君達数人が、ほんとうに伯のことを思っていてくれたのは、実に感謝の他はない、吾輩も晩年の伯が甚だお気の毒であったから、いつも傍にいてあげた、君達はたびたび伯から、木内の夢を見たよと云われた