Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
旅川周馬、いかにも恍呆けた返辞をして、
「そこもとの女房といわっしゃるのは?」
「貴殿は前からご承知のある筈。見返りお綱と申す女で……。いや、まことにお恥かしいわがまま者。無断で国表を出奔して、この江戸表に遊び暮らしているというのを聞き、はるばる尋ねてまいりましたような訳……。ところが、今日、何かそこもとに用事があって、昼からお屋敷内で待っているとか承ります。はなはだ恐れ入りますが、ここへ呼び出していただきたいものでござるが」
「やあ、ではお綱が来ておりますか」
「たしかに、中にいる様子」
「これは困った」
と周馬は頭をかいて、
「あのお綱には、少し借財がござってな。それを取りに来ているのでござろう」
「いや、借貸などのことはどうでも。とにかくちょっと、お綱を呼んで下さらぬか」
「承知いたした。して貴公のお名前は?」
「拙者は」グッと詰まったが孫兵衛、「藤田三四郎と申す者……」口から出まかせにいってみた。
「アア藤田殿で? 心得ました、しばらくそこでお待ち願いたい」
いたって気軽に頷いた旅川周馬、腰から鍵をだして潜り門を開け、中へ入ってお十夜にちょっと笑ってみせたが、門を閉めてスウとどこかへ消えてしまうと、半刻、一刻、二刻あまり、待てど暮らせどそれッきり出てこない。