Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
かれが、脅かされた向うの男は、どこからか、きわめてほのかにさす光線で、自分のかげを自分の目に映した一面の姿見なのであった。舶載物であろう、幅二尺七、八寸、長さ五尺ほどな玻璃の鏡――、それが、行きづまりの壁に、戸のようにはめこんであったのだ。
闇に馴れた目で、それを知ると孫兵衛は、なんのこったといわんばかりの様子、前にもまして、猛然と、ふたたび、お綱へ迫ってきた。
途端に、お綱。
「ちくしょうッ!」
命がけの匕首をふるッて、かれの脾腹を狙ってきた。
「ええ、往生際の悪い女だッ」
孫兵衛は苦もなく身を避けた。そして、お綱の手くびをつかみ止め、手強く捻り曲げようとする。
「ちイッ」と、歯を食いしばるお綱の息! 振り動かす匕首と、お十夜の手が、同じ角度を幾たびも閃めいた。
「あっ痛!」
不意に小指を咬まれたので、孫兵衛は女の胸をドンと突き放した。
ヨロヨロとあおむけになったお綱は、思わず、うしろの鏡へ手をついた。――とたんに、壁はクルリと一転して、あっというまにお綱の体は、車返りにはねこまれて姿を消し、孫兵衛の前には、ただ冷たい鏡だけが立っていた。
掌のうちの玉を見失って、あッ気にとられた孫兵衛は、