Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
お千絵は幾度か死のうとした。周馬ずれの恥かしめに、こうまでたえては行かれない。けれど、乳母のおたみは、兄の唐草銀五郎が吉報をもたらしてくれるまで――と、それこそ、一日のばしに、お千絵の死を思い止まらしてきたのである。
ああ。その待ちに待っている唐草銀五郎が、すでに、禅定寺峠の土になっているとは、夢寐にも知らぬのであった。
その、間違いをひき起した、そもそもの禍因を、今深くかえりみてみると、まったく、お綱の指である。
見返りお綱の指わざが、天王寺で、あの紙入れを掏ったばかりに、渦が渦を呼ぶ鳴門の海のように、それからそれへ波瀾の絶えぬことになった。
だが、その下手人であるお綱自身は、自分の指一本から、そんな大きな悪闘の渦が、この人々の運命を覆していようとは夢にも知らない。事実、みじんも知らずにいるのだ。
かれはただ、弦之丞という初恋の対象だけに吸いよせられて、この渦紋を離れずにいるが、さもなければ、毒を散らして飛び去った、いたずらな蝶に過ぎなかったであろう。
さらに、そのお綱の磁力に、お十夜がひきずられている。
この二人だけは、阿波にも江戸にも、何ら中心の事件にかかわりなく、今日まできたが、いつかは必ず、その渦紋の真ッただ中に巻かれ込むに違いない。