Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
すると、山善という薬問屋の店に、一人の侍が、編笠をかぶったまま、買物をしていた。侍は、真鍮の獅噛み火鉢に片手をかざして、
「ウム、では、薬種はこれで残らず揃うたの」
と、書きとめてきた処方と薬の数とを読み合している。
「はい」
手代は、五、六種の小袋をまとめてあらためながら、
「揃いましてござります。この中の、南蛮薬草などは、手前どもの店以外にはございません物で、はい、ありがとうぞんじました」
「今日はこの処方を揃えるために、かなり尋ね歩いたわい。して、代は何程になるの」
といいながら、紙入れを出しかけると、手代は侍の風采を見て、
「いえ、そのうちに、お屋敷の方へ、ちょうだいに伺わせますから、どうぞお持ち帰りを」
「いやいや、わしは浪人者じゃ。取りに来るというても、定まる屋敷などはない」
「ご冗談を……。ではかえってお手数でございましょうから」と、算盤をパチと弾いて、
「どれもお値の高い物ばかりなので……、ちょうど、三両二分に相成りますが」
「さようか。ではこれで取ってくれい」と、払っている紙入れを、通りすがりに、お綱がチラと見てしまった。
何の薬を求めたのか、本町通りの薬種問屋をでた編笠の侍は、そのままスタスタと大通りへ向ったが、フイと道をかえて、横丁の刀研屋へ入り、そこの店さきで、また小半刻ほど話していた。