Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
で、騒がしいお上屋敷よりは、この代々木荘なれば養生にもよし、人目にもつかぬであろうという、御当家のお取り計らいで、ちょうど、今日駕にのせて、ひそかにここへ移してまいる筈……。どうでござりますな、よそながら、お会いになっておいでになっては」
「は……なんと、お礼の言葉もござりませぬ……」弦之丞は冷静になるべく悶えていた。乱れだした情熱をおさえきるまで、ジッとうつむいていたが、やがて、思慮をきめて、
「勝手のようではござりますが、只今会いましたところで、拙者を拙者とも分りませず、積もる話をすることもなりますまい。御当家のお情けに甘えて、何とぞ、このまましばらくの間お預りを……」
「なるほど」と、鴻山は、弦之丞の気持が分るようにうなずいた。
「よろしゅうござる。医養の及ばぬ病とはきくが、この鴻山が手をつくしても、御養生の方はおひきうけ致す」
「それにて安堵いたしました。何分ともここしばらくの間を」と、弦之丞はそこを辞して、茶荘の門を淋しく出てきた。
すると、入れ違いにスウと門へ入って行った一挺の蒔絵駕。
「あ、今のが――」
と、思わず天蓋を振りかえらせた時、玄関の方で、何か、とりとめなく口走るお千絵の声が、かれの胸へ針のような辛さをうった。