Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

Lisez 鳴門秘帖 (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 56 957 caractères · 114 écrans

Aozora Bunko

ただいたずらに、江戸へ残してきた二人の娘の愛情にばかり囚われていた。

本来、自分がこの阿波へ入り、こうした運命を招いた時の使命はなんだったか! 鳴門の渦と剣山の雲に蔽われていた徳島城の大秘密をあばいて、天下をアッといわせようという壮図に燃えていたのではないか。

老いたものだ。甲賀世阿弥も、いつのまにか焼きが廻った。その頃の元気を思うと恥かしい。

そうだ。支度をしておこう!

いつ何人がこの山を訪れても、すぐに、自分の探っておいた限りの言葉を、その者へ、手渡すことができるように。――よしや、それが無駄になるまでも。

かれの思慮は、ここへ、ピッタリと落ちついた。

死花だ! 死花だ! と彼の心は躍ってくる。徳島城内のかずかずの密謀や、歴々と、阿波一国にみなぎっている反徳川の風潮を、十分に探っていながら、この終身牢に枯死してしまう運命であったものが、誰かの手で、江戸城へ届けられるとすれば、その甲賀世阿弥に死花が咲くわけである。

虫のごとき死をまぬがれて、人間らしい死を遂げることができる。

で、世阿弥はその支度をしようとした。

しかし、ひるがえってみると、この山牢の中に、悠々と、そういう記録などを書き残しておく、筆墨などはない筈である。