Classiques japonais avec furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Lisez 黒百合 (くろゆり) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 78 148 caractères · 154 écrans
いや、有るに違いはないんだよ。」
萱の軒端に鳥の声、という侘しいのであるが、お雪が、朝、晩、花売に市へ行く、出際と、帰ってからと、二度ずつ襷懸けで拭込むので、朽目に埃も溜らず、冷々と濡色を見せて涼しげな縁に端居して、柱に背を持たしたのは若山拓、煩のある双の目を塞いだまま。
生は東京で、氏素性は明かでない。父も母も誰も知らず、諸国漫遊の途次、一昨年の秋、この富山に来て、旅籠町の青柳という旅店に一泊した。その夜賊のためにのこらず金子を奪われて、明る日の宿料もない始末。七日十日逗留して故郷へ手紙を出した処で、仔細あって送金の見込はないので、進退谷まったのを、宜しゅうがすというような気前の好い商人はここにはない。ただし地方裁判所の検事に朝野なにがしというのが、その為人に見る所があって、世話をして、足を留めさせたということを、かつて教を受けた学生は皆知っている。若山は、昔なら浪人の手習師匠、由緒ある士がしばし世を忍ぶ生計によくある私塾を開いた。温厚篤実、今の世には珍らしい人物で、且つ博学で、恐らく大学に業を修したのであろうと、中学校の生意気なのが渡りものと侮って冷かしに行って舌を巻いたことさえあるから、教子も多く、皆敬い、懐いていたが、日も経たず目を煩って久しく癒えないので、英書を閲し、数字を書くことが出来なくなっ