Classiques japonais avec furigana
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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
Lisez いやな感じ (いやなかんじ) de 高見 順 (たかみじゅん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 292 113 caractères · 587 écrans
奥の私室に、足を入れたその瞬間、そこはあたかも中国人の家に招かれたかのような錯覚を俺に与えた。調度も装飾も、何から何まですべて中国のものなのだ。壁には極彩色の刺繍の壁かけが飾られている。見たところ日本のものはひとつもない。
螺鈿の光る紫檀机に、これはヨオキス(西洋酒)の瓶がいろいろと並べてあって、
「何がいいかしら。お食事のあとだったら、これがいいでしょうね」
照子は修指甲をした手で白蘭地の瓶を取って(部屋が部屋なので、ついこんなふうに書いたが)ブランディ・グラスと一緒に俺の前に置いた。星が五つある極上の奴だ。それを俺にすすめると、
「あたしもいただこう」
と自分はウィスキーを、そうだ、威士忌を――それもジョニー・ウォーカーの黒を無造作にコップについで、開水瓶(魔法瓶)の湯で割った。上海は生水が飲めないので、俺の宿屋でも魔法瓶がそなえてある。
「では……」
と照子は俺に向けてコップを捧げ、ホット・ウィスキーをひと口ふくんで、
「びっくりしたわ。でも、嬉しいわ」
思いがけない俺との再会の感想をそんなように言った。商売柄、技巧的なものが感じられたが、俺が上海に来たことを誰からも知らされていないことは事実のようだった。