Classiques japonais avec furigana
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ドグラ・マグラ
ドグラ・マグラ
夢野 久作
Lisez ドグラ・マグラ de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 424 847 caractères · 824 écrans
さすれば御役目滞り無く相済みて、無益の殺生も御座なかる可く、御藩の恥辱とも相成るまじ。此儀如何や。御返答承り度しと言葉爽やかに笑を含めば、一同呆るゝ事稍久焉。忽ちにして雲井喜三郎は満面に朱を注ぎつ。おのれ口の横さまに裂けたる雑言哉。此間こそ酔ひ痴れて不覚をも取りたれ、今日は吾が刀の錆までもあるまじ。かゝれや物共、相手は一人ぞ。女のほかは斬り棄つるとも苦しからず。かゝれ/\と刀柄をたゝけば、応と意気込む覚えの面々、人甲斐も無き旅僧一人。何程の事やあらむと侮りつゝ、雪影うつらふ氷の刃を、抜き連れ抜き連れ競ひかゝる。虹汀さらば詮方なしと、竹の杖を左手に取り、空拳を舞はして真先かけし一人の刃を奪ひ、続いてかゝる白刃を払ひ落し、群がり落つる毬棒、刺叉を戞矢/\と斬落して、道幅一杯に立働らきつゝ人馬の傍に寄せ付けず、其のほか峯打ち当て身の数々に、或は気絶し又は悶絶して、雪中を転び、海中に陥るなど早くも十数人に及びける。
思ひもかけぬ旅僧の手練に、さしもの大勢あしらひ兼ね、白み渡つて見えたりければ、雲井喜三郎今は得堪へず、小癪なる坊主の腕立て哉。いでや新身の切れ味見せて、逆縁の引導渡し呉れむと陣太刀長やかに抜き放ち、青眼に構へて足法乱さず、切尖するどく詰め寄り来る。