Classiques japonais avec furigana
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せんきゅうひゃくにじゅうさんねんなつ
一九二三年夏
宮本 百合子
Lisez 一九二三年夏 (せんきゅうひゃくにじゅうさんねんなつ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 898 caractères · 16 écrans
六月二十四日
見えないところから、月の光が廊下に流れ込んで居た。硝子戸を透して、地に堕ちて居る樹木の陰や黒々と立って居る松の深い梢を見ると、自分は急にうすら寒い、凍りついたものを見えるような心持に打れた。
◎
“暗い部屋から茶の間の方に行こうとすると、畳廊下の下に、錯綜して、明るく、暗く走せ違って居る部屋部屋から洩れる光りで、自分は変な目まぐるしさを覚えた。襖に当って屈曲した三尺幅の光の波が、くっきり斜に、表現派の舞台装置のように、光度を違えて、模様を描いて居る。
◎
宮原氏と原稿の話をした時、二十四字づめを使って居ると云うと
彼は
「それ丈は一寸違って居るんですね」と云った。
自分は、軽い、而し鋭い侮蔑を感じた。
◎
六月の若い栗の梢に、黄金の軽舸のような半月が浮んだ。
◎
彼は、自然や小さな動物を愛し、金魚を飼い小鳥をかいし乍ら、庭に犬が入ったり、蟻が出たりすると、狂気のようになって追い廻す性質だ。
七月二日
梅雨がもう少しで上ろうと云う日、二階から茂った梧桐や槇の葉ごしに見える空は、どんよりと曇り、底に雲母のような明土を湛えて居る。