Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

にかいから

二階から

岡本 綺堂

Lisez 二階から (にかいから) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 761 caractères · 30 écrans

Aozora Bunko

しかも私はこの記事を読んで、涙をこぼした一人である。

団五郎と私とは知己でも何でもない。今日まで一度も交際したことはなかった。が、私の方ではこの人を記憶している。歌舞伎座の舞台開きの当時、私は父と一所に団十郎の部屋へ遊びにゆくと、丁度わたしと同年配ぐらいの美少年が団十郎の傍に控えていて、私たちに茶を出したり、団十郎の手廻りの用などを足していた。いうまでもなく団十郎の弟子である。

「綺麗な児だが、何といいます。」

父が訊くと、団十郎は笑って答えた。

「団五郎というのです。いたずら者で――。」

答はこれだけの極めて簡短なものであったが、その笑みを含んだ口吻にも、弟子を見遣った眼の色にも、一種の慈愛が籠っていた。この児は師匠に可愛がられているのであろうと、私も子供心に推量した。

「今に好い役者になるでしょう。」

父が重ねていうと、団十郎はまた笑った。

「どうですかねえ。しかしまあ、どうにかこうにかものにはなりましょうよ。」

若い弟子に就ての問答はこれだけであった。やがて幕が明くと、団十郎は水戸黄門で舞台に現れた。その太刀持を勤めている小姓は、かの団五郎であった。