Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ひみつ
刺青・秘密
谷崎 潤一郎
Lisez 刺青・秘密 (ひみつ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 935 caractères · 66 écrans
子供時代に経験したような謎の世界の感じに、再び私は誘われた。
「あなた、あの看板の字が読めましたか。」
「いや読めなかった。一体此処は何処なのだか私にはまるで判らない。私はお前の生活に就いては三年前の太平洋の波の上の事ばかりしか知らないのだ。私はお前に誘惑されて、何だか遠い海の向うの、幻の国へ伴れて来られたように思われる。」
私がこう答えると、女はしみじみとした悲しい声で、こんな事を云った。
「後生だからいつまでもそう云う気持で居て下さい。幻の国に住む、夢の中の女だと思って居て下さい。もう二度と再び、今夜のような我が儘を云わないで下さい。」
女の眼からは、涙が流れて居るらしかった。
その後暫く、私は、あの晩女に見せられた不思議な街の光景を忘れることが出来なかった。燈火のかんかんともっている賑やかな狭い小路の突き当りに見えた印形屋の看板が、頭にはッきりと印象されて居た。何とかして、あの町の在りかを捜し出そうと苦心した揚句、私は漸く一策を案じ出した。
長い年月の間、毎夜のように相乗りをして引き擦り廻されて居るうちに、雷門で俥がくるくると一つ所を廻る度数や、右に折れ左に曲る回数まで、一定して来て、私はいつともなくその塩梅を覚え込んでしまった。